2015年2月10日火曜日

『感想:CHAOS;CHILD』

 色々な感想はあるだろうな、って気がしますけど、正しくエンターテイメントとして楽しめた作品でしたよ。新年明けてすぐにクリアしていたんですが、気付けば感想書かぬまま二月だった……。
 まあそんなわけで科学ADVシリーズ第四弾『CHAOS;CHILD(以降カオチャ)』です。
 今作はライター四人体制の上、これまで科学ADVでメインを張ってきた林直孝さんが監修・サブに移り、代わりにアニメ業界から招かれたという梅原英司さんがメインシナリオを担当する、というサプライズもありましたが、個人的には大当たりだったな、という塩梅で。
  ただ肝の部分が「ネタバレしない方が良い」タイプの作品なので、あまり感想として書けることがない……まぁカオヘとの関連も交えつつ書き殴っておきました。


科学ADVというよりは正しくCHAOS;HEADの続編


 まず今作に関してなんですが、科学ADVシリーズというよりは前作でもある「CHAOS;HEAD(以降カオヘ)」の続編として捉えた方が良いと思います。何故かというと、科学ADVシリーズってカオヘだけ方向性が少し違っているんですよね。
 カオヘは「ニトロプラスとのコラボ」という色合いが強い作品だったので、どちらかというとメインになるのは「ディソードなる武器を操るギガロマニアックスと呼ばれる能力者達」です。科学ADVシリーズは共通して「もしかしたら有り得たかもしれないIFの科学」が根底にありますが、その中でも規格外の異能を成立させているのがカオヘという作品なわけです。

 まあ科学ADVというブランドをブランドたらしめたのは、完成度・感情移入度共に高い『Steins;gate』だったと思うんですけど、だからこそ初作であるカオヘは良い意味で荒削りな個性と魅力がある、という印象ですね。まだ色々固まっていない頃の味がある。
 そういう意味で『CHAOS;CHILD』という作品は正しく「CHAOS;HEADの続編」です。
 カオヘの魅力でもあった「猟奇的な事件が続く中で、オカルト的な都市伝説や陰謀論がネットスラングと共に飛び交い、主人公を中心に熟成されていく疑心暗鬼」を見事継承・補完しています。
 なので、カオヘ中盤以降で展開される、ジェットコースターのようなスピード感を気に入っていた人には是非お勧めしたい作品かな、という感じです。一方でシュタゲ・ロボノのような雰囲気とは真逆を行っているので、そこだけは注意が必要かな。


ギミックは前作と共通、エンターテイメントな過程を楽しむ話


 と、前置きが続いたところで中身の話。
 まず「CHAOS;HEADの続編」という点で重要なのは、「ギガロマニアックス」周りの設定も引き続き登場するということです。つまり「この物語で起こるあらゆる現象は"ギガロマニアックス"で説明がつく」と言っても過言ではないわけですな。
 なので、プレイ前は「下手すると茶番化して醒めるんじゃないか?」なんて危惧を抱いたんですけども、まあ、結果的にいえば問題ありませんでした。全然、何も問題ない。むしろ答えが解りきっているからこそ、半ば開き直りのように詰め込まれたどんでん返しは最高に面白かったです。
 今作の主人公は「新聞部としてのスクープを求めている」という、カオヘのタクよりアクティブな動機を持っているので、泥沼に浸かるように異常事態へ足を踏み込んでいきますし、周囲の人間も「同じ部の仲間」としてうまいことサポートしてくれますから、だれることなくエンタメ的なサプライズを楽しむことができます。

 加えて、ギガロマニアックスの要素が出てくるのは終盤からなので、「これは多分"妄想"のせいだな」と解ってはいても、一般人目線で情報を整理・考察されていく過程はやっぱり面白いしワクワクするんですよね。ある意味で刑事コロンボ的な「逆の流れ」を楽しむ面白さと言うんでしょうか。果たして現実という価値観から、非現実的な発想へ飛びこめるだろうか、と主人公達を見守る神の視点的な持ち味もある。
 それを加速するように掲示板や動画など、現在のネット要素を取り入れたシーンが入るのもやはり良い。そういう意味で過程が楽しめるシナリオになっているかな。

 その面白さはカオヘの消化不良感も補っていると思います。カオヘは後に移植版で個別ルートが追加されたものの、ベースは一本道のシナリオでしたから、色々惜しい部分もあるんですよね。オカルト的なキナ臭さが魅力でありつつも、タクの心情がメインにあったので、序盤から中盤にかけて物足りない箇所もありましたし。カオチャの展開の数々は「これこれ、こういうの欲しかった!」と膝を打つこと間違いなしです。


是非とも最後までのプレイを


 さて、ここまで散々「過程を楽しむもの」と書いてきましたが、そこだけだったら「良いカオヘスピンオフだったね」で終わっていたと思います。今作の面白さはまさしくその過程が面白いからこその、その後にある。ただそこを詳しく掘り下げてしまうとネタバレになってしまうので書けません。
 ただ、折角Xboxoneという、どちらかといえばニッチなハードを所有していて、かつカオチャを手に取ったならば、是非とも全個別ルートを終えて、その後に出現するTRUEルートに突入してほしいと思います。

 この全てを終えた後に「ああ!」と見出せる何かがある、という意味では、個人的にシュタゲの次に面白い科学ADVになれたかな、と思います。第三弾である『ROBOTICS;NOTES』は良くも悪くもシュタゲのハードルに飲まれた作品だったので、その印象で手が伸びない、という人も機会があればカオチャを遊んでほしいかな(一応フォローしとくと俺はロボノ好きです)