2014年11月3日月曜日

『感想:零 ~濡鴉ノ巫女~』

 ゲームとして凄く面白かった。
 和風ホラー物としては既に定番となっている零シリーズ最新作です。




●Gamepadでの戦闘は素直に面白い
 今作からWiiUで発売ということで、操作性も含めてどんな感じになるんだろうと楽しみにしていたわけですが、Gamepadによるプレイが思いのほか遊びやすくてびっくりですね。戦闘に関してはシリーズでもっとも熱中した作品だったのではないかと思います。

 Gamepadをカメラと見立てることで、腕を直接動かして照準を合わせられるようになったわけなんですが、この操作が中々楽しいんですよ。零は不意打ち的に現れる浮遊霊を撮影するのも醍醐味ですから、Gamepadになったことで即座にカメラを構えてシャッター、という流れがスムーズになりました。
 もちろん右スティックによる従来操作も可能なので、Gamepadを動かしたくないという人も問題なく遊べます。個人的には全カメラ感度を最大にした上で、縦軸の照準はGamepadを動かし、横軸の照準は右スティックで合わせるという併用プレイが快適でした。
 従来よりも移動とカメラの切り替えがスムーズになったこともあり、適度にカメラを下ろして位置取りを調整する、といった行動もしやすくなりましたしね。他にも今までのカウンター戦法から、積極的に小刻みに攻撃していき、リソースを稼いだところで大きな一撃を与える、という「率先して殴ってもいい戦闘」になったのは大きな変化かな。もちろんカウンターも有効なので状況に合わせて動くことができる。

 好みが分かれる部分としては、こちらの手数が増したことにより、敵の耐久性も上がったということ。積極的に「シャッターチャンス」「フェイタルフレーム」を狙うか、威力の高いフィルムを使わないと一回の戦闘に時間が掛かるようになっています。
 また、ゲーム進行がチャプター制+オートセーブになり、チャプターが終わるごとにリザルトを集計してミッションメニューに飛ぶようになりました。ここもやっぱり好みが分かれるところかな。次チャプターへ行く前にポイントを使ってアイテムを買うこともできるようになりましたし、チャプターごとにアイテムの所持量が独立しているので、リソース節約をする必要もなくなりました(ランクSSを目指すなら話は別ですが)
 まあ個人的にアイテムの仕様に関してはこれで良いと思うんですが、話に区切りがつくごとにメニューに戻るのでホラーとしての移入度はぶつ切りになってしまっていたのが惜しかったかな。とはいえ、ゲーム的には十三年目にしてまだ面白くなるか、という感じで満足しております。

 あと各所で言われていたけどエロいです。このゲーム。
 水に濡れると与ダメージ・被ダメージが上昇するシステムがあるんですが、それに応じて服の透け具合とか肌の濡れ具合も細かく描写されるんですよね。いや濡れることは設定ともちゃんと繋がりがあるんですけどね。しかしそれを建前にしてエロを追及しているようにしか見えない。
 でも和風的なエロさなので、何処となくマッチしていて納得してしまう悔しさ。

●ストーリー自体はファン向け、多少想像力に委ねられる部分も
 で、ストーリーの方ですが。
 これまで以上にプレイヤーの解釈に委ねられているといいますか、主人公が三人いる上、全体を通して登場人物達があまり喋らないのもあって断片的な話になっていたと思います。シリーズ集大成的な要素(深紅と深羽、麻生博士のバックボーン等)が詰め込まれているので、マップ各地に存在する資料を読みながら補完すると感慨深い背景は見えてくるんですけどね。
 ただ全体を通して物語としてのインパクトは弱めかな。TIPSだけではなく「会話」としてもっと追求してほしかったというところでしょうか。この主人公達の関係性は好みだったので、できればもう一作ほど主人公続投でやってほしい気がします(特に夕莉、深羽)
 終盤にプレイヤーが迫られる選択と、それに伴う苦味ある結果など、和風ホラーだからこそできる味もあるので自分としては満足のいく新作でございました。

 あとはチャプター制になったこともあってか、舞台となる日上山だけでなく、主人公達が拠点としている喫茶店をステージにしたチャプターもあったのは良いところかな。これは若干ゲーム部分とも絡んですが、どう見たってヤバい場所である日上山をメインとしている分、合間に「日常的な場所もおかしくなる」という演出が挟まるとメリハリ付くんですよね。
 ホラー物は大体閉鎖空間になって脱出するのがメインになりますが、場所に囚われずにホラーをやる、という意味で濡鴉は新鮮に感じられたかな。
 今後街中探索とかできるようになると捗るかもしれない。

 そういう意味で「WiiU一作目としては満足。以降の続編にも期待大」という感想に落ち着きますね。あとはそろそろ初代、刺青のリメイクも欲しいような……。