PSPの中でも、特に愛着を抱いていた『AKIBA'S TRIP』の続編です。
前作は『ベン・トー』の作者でもあるアサウラさんがシナリオに関わっていましたが、2ではその辺りの面々を一新させたとのことで、ゲームシステム的にはあまり心配していなかったんですけども、ストーリーの方は期待半分、不安半分で迎えた作品でもありました。
●ゲーム部分
ゲーム面は純粋に前作をマイナーチェンジしたものになっています。
秋葉原を舞台としている点は変わっていません。むしろPS VITA・PS3になったことで移動範囲も増えて探索は楽しくなったと思います。先日久々に1PLUSを触ったんですが、記憶よりもマップが小さかったんですよね。そういう意味でもハードを変えた意味はあったのかなと。
新規マップも増えてますし、前作と比較する楽しみがあるんじゃないでしょうか。
キャラクターのモデリングは正直まだまだですが(手の辺りとか)、帽子・服・ズボンの他、アクセサリーや脱衣モーション、インナーも変更できるようになったのはGOOD。クリア後に主人公の外見を「ヒロイン」や「一般NPC」に変えられるモデルチェンジも相変わらずで着せ替えが楽しいですね。
特に今作はヒロインをパートナーに付けられるので、二人分の装備を弄ることができます。
ここは素直に評価したいところ。
戦闘システムも大きくは変わっていませんが、戦闘中に「服の耐久力」や「パートナーの簡易ステータス」が表示されるようになったのは地味に大きな変化かな? 前作はそういった数値的情報が見えなかったので、良くも悪くも感覚で判断する戦闘だったんですよね。
あとはパートナーが同行できるようになったことで、ヒロインと連携して服を脱がす「ユニゾンストリップ」といった合体技要素も追加されました。これも個人的にはポイント高かったですね。カットインや掛け合いもあるし、ヒロインが連れ歩ける以上はそういった要素があると嬉しい。
ただカウンターシステムの変更と、それに基づく敵AIだけは残念な出来。今回のカウンターはシンプルになっていて、防御中に攻撃ボタンを押せば自動的にカウンターをしてくれる、というものなんですが、問題なのは「敵が頻繁に防御+カウンター待ちしてくる」ことなんですよね。
おかげでダメージが通り辛く、こちらもカウンター待ちすることが最善手になりがちです。強攻撃で破ることも可能なんですが、乱戦になりがちなゲームですから、小回りの効く通常攻撃は重宝するんですよね。そういう意味で、敵が強くなる終盤はテンポが悪くなりがちで、ここだけは前作の方が楽しかったかな。
●ストーリー部分
さて、問題のストーリー部分ですが、とにかく「惜しい」の一言でしょうか。
世界観は一新され、「魔骸者」と呼ばれる人造吸血鬼と、それを追う人外達を巡る物語になっています。主人公は「何者かが行っている実験」に巻き込まれたことで魔骸者になってしまったという扱い。
前作は秋葉原に潜伏するカゲヤシ(吸血鬼)と、それを駆逐しようとするNIRO(人間)、そしてそれに巻き込まれた主人公達という三つ巴の構図を取っており、その中でどの勢力に協力するべきなのか、主人公達にとって本当の脅威とは誰なのか、といった選択を迫られ、細かく分岐していくストーリーが魅力だったといえます。
2はその辺りシンプルになっていて、戦うべき敵はOPで提示され、あとはひたすら戦闘を続けるような話なんですよね。それが悪いとは思わないのですが、ヒロインが多かったわりに、話のスケールが広がることがなく、各キャラクターが掘り下げられないまま終わってしまった、という印象が強い。
終盤になってくると、核心というべきシナリオが展開されますが、それも1の焼き直しに近いため、現状では前向きな感想を出すことができない、といった感じでしょうか。大師本製薬といった大企業も出てくるわけですから、1とは異なる切り口もできたんじゃないのかなあ、と感じてしまう話でした。
ただ、良い部分もある。妹のナナですね。この娘、めっさ可愛い。
前作の妹はプレイヤーが着せ替えをするためのお金回収装置でしたから、(可愛かったけど)あまり話には絡んできませんでした(可愛かったけど)
一方、今回のナナは積極的に絡んでくる。専用のサブイベントもあるし、性格も適度にダウナーな甘えん坊と完璧な属性持ち。会話のパターンを読み切れば一緒にお風呂に入ることもできる。
あとこれは幼馴染の登子にも言えることなんですが、人外となった主人公に対してリアクションをしてくれるんですよ。前作は「時間が経てば元に戻れる」という保証があったので、あまりそこは掘り下げられなかったんですが、今作は「後戻りできない」という設定になっていて良いなと。
ナナは人間をやめてしまった主人公を受け入れようとしますし、登子は登子で「窮地に陥った主人公にできることは何か」というアプローチで、自ら人間をやめる決断を下すシーンがあります。ここは本当にね、好みでした。
あとシナリオの個性って意味では志遠が一番ヒロインやっていたかな?
彼女だけ何か優遇されていたような……可愛かったですけどね。
●そんなわけで
プレイ時間はサブミッションを全てこなしながら遊んでも初回11時間といったところかな。
まあ元々前作も1周のプレイ時間は長くないゲームでしたから、そこはあまり気になりませんでした。ただ、短いながらに必要なシーンでは会話を詰め込み、周回プレイによって全体像が見えてくる構成を取っていた前作に対し、2は恐ろしいほどの薄味っぷりに気付かされると思います。
個別ルートといっても、ラスボス前のシーンに差分が発生する程度なので、基本的な流れはあまり変わらないですしね……。それもこれも、戦うべき敵が序盤に判明しているせいなのですが、いや、うん、つまり惜しいゲームでした。
といってもアクションゲームとしては面白かったですよ。
周回時に服集めをしたり、脱衣スキルを上げたりと、秋葉原をぶらついて横道に逸れまくってると時間が吸収されていく。そういう意味では「前作に対してどれだけ思い入れがあるか」によって評価が変わりそうな予感。
でも2PLUSか、2システムでの1再リメイクが出たら買います。3が出ても買います。2路線でも可能性は感じるんだ。感じるんだよッ!!
あ、ただサブミッションの内容が「秋葉原の迷惑者を殴り続ける」ばかりだったのはちょっと……。
メインも戦闘だけなのに、合間のサブミッションも戦闘オンリーとか、まさに秋葉原無双状態。
特にアイドル48人バトルとか、ゲームシステム的に相性悪すぎて禿げるかと思いました。
前作は色々個性的で笑えるサブミッションがあったので、今後があるならそちらの改善も何卒。
長くなったけどこの辺りで。こう、色々複雑な思いで、纏めきれなかった。